なみえの今
ふるさとの祭り2022in道の駅なみえが開かれました
2022年10月24日
こんにちは、地域づくり支援専門員 今野です。
福島県と実行委員会が主催し、震災後に開催している「ふるさとの祭り」が今年は道の駅なみえの交流ひろばを会場に、10月8日と9日の2日間に渡って開かれました。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの有観客開催となりました。今年は全14団体の出演があり、浪江町からは5団体が神楽や田植踊りを披露しました。
浪江町川添芸能保存会は初日に出演し、川添の神楽を披露しました。
ステージで石澤孝行保存会長は「3年ぶりに開催する会場が”私たちの”浪江町で、トップを飾らせてもらう。ここで皆さんと会えるのがうれしい。祭りを通しての再会は、醍醐味です」など高揚した様子で話しました。
特徴的なのは「乱獅子(らんじし)」で、お客さんにも参加を呼びかけ、幕の中に6~7人が入りお囃子に合わせ荒々しく舞います。川添の神楽は雌獅子で女性が入ると災いが起きるとされており、残念ですが参加できるのは男性の方のみとなります。
石澤さんは「国玉神社が11年かかって再建し、獅子が戻る場所ができた。継続は大変だが、動けるうちは続けていきたい」などと今後に向けた想いを話しました。
二日目は浪江町からは4団体が出演し、様々な舞いを披露しました。
帰還困難区域のため元の場所で練習などできない苦労の中、室原の神楽は精力的に活動を続けてきました。
福島県の民俗芸能研究の第一人者として知られるNPO法人民俗芸能を継承するふくしまの会の懸田弘訓理事長は「非常に熱心に活動されている」と評し、室原の神楽の特徴として「最後は荒々しく舞うが、怒っているのではなく神様が寄り付くことで荒々しい動きになる」などと説明しました。
獅子舞の蚊帳についても「風車が描いてあるが、悪霊退散の意味合いと、人生が上手く回ってほしい想いが込められている」と解説しました。
室原郷土芸能保存会の宮口勝美保存会長は「コロナで3年間発表の場がなかった。集まることもできず、ようやく練習し皆さんの前で披露ができてうれしい。福島県外から参加している人もいる」などと話しました。また、室原でも特定復興再生拠点は来春の解除が見込まれており、神社の再建も進められていることから「神社で遷宮祭などもできるように努力していきたい」などと話しました。
樋渡・牛渡の田植踊について懸田さんは「衣装について話すと、かけているタスキは単なる飾りではない。神様が乗り移るために必要なものとなっている」「着物の赤色は、悪霊を払うという信仰から。古くから脈々と受け継がれている」などと解説しました。また、「時代的にはこの後に披露される請戸の田植踊へと広がっていく、その一歩手前の田植踊り」と、それぞれの踊りの違いについて触れました。
樋渡・牛渡田植踊保存会の鈴木美智子会長は「避難先が遠い人もいるので、一番の苦労は集まるのが難しいこと。でも若い人が入ってくれたので、心強い」など苦労と今後に向けた期待を話しました。
続いて出演した請戸芸能保存会による請戸の田植踊について、懸田さんは「津波で家族や親族を失い、着物なども流された中、いち早く震災の年の8月に復活している。大変な努力だったと思う」など当時の状況を詳しく話しました。
今回参加している一番小さい子は小学1年生ということで、可愛らしい踊りに観覧された皆さんも笑顔が絶えませんでした。
請戸芸能保存会の佐々木繁子会長は「地元の会場で皆さんの前で披露できるのはうれしく、みんなの顔を見ると私たちも元気になる」などと話しました。
およそ200年前より伝わる南津島の田植踊りについて懸田さんは「衣装も踊りもこれまでの田植踊りとまったく違う。非常に多彩な田植踊りの姿を知ってほしい」などと話しました。樋渡・牛渡の田植踊や請戸の田植踊は「動」の美しさのある田植踊りですが、南津島の田植踊りは「静」の美しさがある踊りで、浜通りの田植踊りの古い姿なのだそうです。
今回は以前当ブログでお伝えした東北学院大学の大学生が4名、応援で加わりました。参加した学生は「今回初めてとなる機会。緊張もあったが練習の成果が出せたと思う」などと感想を述べました。また「ご縁を頂いて踊りの起源などを知れて面白かった」など、ここまで関わって感じたことなどを話しました。
観客席では来場した町民の方どうしの「久しぶり」などの声、そしてステージ裏では参加された会員の方々の再会の声と、団体どうしが交流する姿なども見え、地域をつなぐ民俗芸能の力を感じることができた2日間でした。