なみえの今

8年ぶり、標葉郷相馬野馬追を終えて④

2018年8月7日

地域づくり支援専門員の今野です。

4回にわたってお届けしました標葉郷の野馬追の様子も、今回で一区切り。8年ぶりとなる浪江町からの出陣ということで、騎馬武者の皆さんの野馬追と浪江町への想いをお届けします。

 

(2日目の最後を飾った、中央公園での神旗争奪戦)

 

現在は福島市で避難生活を送っていますが、震災後も休むことなく出ている螺役長の横山秀明さんは、事務局も務めていることから「感無量」と話しました。

そして「浪江町での行列の際、沿道の皆さんに見守ってもらった。再開できたのは町の復興の大きな一歩になると思っている」と町への想いを述べて頂きました。

同じ標葉郷である双葉町、大熊町については「復興は道半ば。皆で支えながら、双葉、大熊の町内でもお行列ができるよう、後押ししないといけないと思っている」などと双葉地方への想いも語って頂きました。

 

(中央公園への帰り馬行列。来年の街並みは、どう変わっているでしょうか)

 

続いて、軍者の林富士雄さん。

林さんは町内で新聞販売店を経営されています。林さんは「浪江の街なかを臨む高台に住んでいるが、8年ぶりに自宅から出陣した。馬上から阿武隈山系と西部地区を臨む景色を見ると、昔のことを思い出した」などと話してくださいました。

また、「新聞販売店を昨年の1月に再開し、はじめは9部しか配達がなかったが、今は200部弱までになった。元通りまでは難しいと思うが、徐々に人が戻って来ている。地元のために、お店をやっていきたい」と、復興へ向けた想いを語ってくれました。

 

侍大将を務めた武内勝芳さんは「野馬追の歴史の中で、これまでも危機的な状況はあったと思うが、皆でつないできた。これからも我々がつないでいく」と、千年続いている歴史に後押しされている想いを語りました。

 

(侍大将を務めた武内勝芳さん)

 

野馬追の思い出についてうかがうと「昔は帰り馬で南相馬市原町区の雲雀ヶ原から戻る際、浪江町内が近づいて見えてくる田畑の風景が最高だった。地域の人々を守るために、我々は出陣する。領土や領民、その土地の田畑や住民を守るために出て、帰ってくるんだ」と話してくださいました。

そして、「今はスマホの時代になったが、こういった気持ちをずっと根っこに持ってほしい。若い騎馬武者たちにもちゃんと伝えていきたい」などと話してくれました。

 

現在はイギリスに留学中の20歳、山本幸輝さんは野馬追に合わせて一時帰国しました。
武具や馬具の手入れを終え、2日間を振り返ると「本祭りと比べれば浪江に集まる人は少ないけど、知り合いが居て声を掛け合う感じで、気持ち的には楽。その分、野馬追に集中することができる」と話しました。
そして「留学していると広い視野を持つことができる」と話し、「例えば農業も、これまでと違うやり方で試したりできるのではないか。そんな風に浪江町は世界の問題を解決する場になる可能性がある」など考えを述べ、「いつかは帰ってきたい」と話してくださいました。

 

8年ぶりの開催に、町の皆さんの様々な想いがこもった標葉郷の相馬野馬追。千年の野馬追の歴史をまた1年、刻みました。

来年の夏はどうなっているのでしょうか、今から楽しみです。